実験結果報告
ジャム瓶ジェットエンジンに関する一連の実験結果と動画が出来たので、改めて報告します。一番まともに撮れた動画を以下に示します。
この動画はEXILIM EX-F1にて撮影した300コマ/秒の動画です。火が一度液面に接した後、アルコール液面付近で何度も明滅しているのが確認できますか?300コマ/秒では明滅しているようにしか見えませんが、1200コマ/秒で見ると細かい爆発と吸気を繰り返している事が確認できます。
以降では、実験の内容についてもう少し詳しく記載していきます。
使用物品
実験道具として、以下の物を使用しています。
- 容器:ジャム瓶200、及びジャム瓶270(メーカー:東洋佐々木株式会社)
- 燃料:ベンヂン(メーカー:アルプス)、燃料用アルコール(メーカー:ケンエー)
- 着火機器:チャッカマン(メーカー:TOKAI)
実験道具の内、燃料用アルコール以外はホームセンターで揃います。(ベンヂンは洗剤コーナー付近にありました。)燃料用アルコールは"DIY工作 Weblog"の情報を参考にドラッグストアを探し回った所、3件目で発見しました。*1。
これらの実験道具の総額は、およそ1500円でした。(チャッカマンを含む)
ジャム瓶の加工法
電動工具が使えない場合、以下の工具が有効でした。
- ネズミ錐(穴サイズ3mm)
- リーマ
- ヤスリ(ダイヤモンドヤスリ)
穴を開けるだけならば、ネズミ錐が最も簡単でした。私は3mmのネズミ錐が(手元にあったので)使いましたが、もっと大きな径を開けられる物があれば、そちらを使った方が良いです。
リーマを使う際は注意して下さい。ジャム瓶のフタは非常に薄いので不均等に穴が拡大し、最終的には六角形の穴が開いてしまいます。(失敗事例はこちら…)穴が多角形のようになってきたと思ったら、すぐにヤスリで穴が円に見えるように修正して下さい。
これらの工具の総額はおよそ2000円でした。
実験について
以下の事を調べるために実験を行いました。
- 燃料用アルコールとベンヂンの違いについて
- 穴径の違いによる動きの違いについて
実験結果(燃料は全て燃料用アルコール)
実験結果を以下に示します。なお、瓶は東洋佐々木株式会社のジャム瓶200を使用しています
直径4mmの穴を開けたジャム瓶を使った場合
火が燃料に引火する瞬間。チャッカマンの火が大きく外側に揺れる。瓶内の炎の色は赤く、すぐに消火する。
音は『ヒュボッ』という鋭い音が一回だけ。何か吹き上がったのが見えたが、恐らくアルコール燃料だと思われる。匂いは非常に臭い。
実験後、フタの裏側に黄色い何かが付着した。恐らく燃料に含まれていた物質だと思うが詳細は不明。
直径6mmの穴を開けたジャム瓶を使った場合
瓶内の炎の色は青色。すぐに消えるのは直径4mmの穴の時と同じ。音、匂い等は直径4mmの穴の時と印象は変わらず。
改めて写真を見ると、6mmでは無く7mm程度だと思われる。
番外編 直径10.5mmの穴、1200コマ/秒で撮影した場合
非常に画像が暗く、カメラ本体の画面以外では炎を確認出来ないので、画像、動画のアップロードはありません。撮影の結果、300コマ秒で明滅しているように見えた炎が実は細かく燃焼、吸気を繰り返している事が確認出来ます。
(※どなたか、動画の精細度を落とさずにコントラストを上げる方法をご存知では無いでしょうか?
この動画はかなり貴重な映像だと思いますが、コントラストが低くてPCでは視認できず困っています。ご存知でしたら教えて下さい。)
直径10.5の穴、燃料をベンヂンに変更した場合
※動画準備中。
一度火が点くが、ジャム瓶の開口部付近で炎が留まる。
まとめ
実験結果は、以下の通りであった。
- 燃料用アルコールを使用する場合、直径10mm程度の穴を開けると燃焼が持続する。直径14mmや18mmでは燃焼が持続しない事は別途確認済みのため、10mm〜14mmの間に最適燃焼ポイントがあると思われる。
- 燃料をベンヂンに変更すると、上手く燃焼しない。あるいは穴径を10.5mmより小さくすると良いかも知れないが、現時点では不明。
次回への課題
以下の内容が次回への課題です。
- 燃焼反応をもっと綺麗に撮れる方法の確立。
- ジャム瓶ジェットの推力測定
- ジャム瓶の種類の変化と燃焼の違いについて。
- 整流器作成による燃焼持続化
おまけ Q&A
実験をする前に思っていた疑問について、以下に示します。
危険じゃあ無いか?
危険なのは、アルコールの火が薄い青色であり殆ど見えない事と、上に燃料等が吹き上がる事だけ。最初ジャム瓶が割れる事を心配して外で実験しましたが、今の所破損は無し。
ただし、既にヒビが入っている等のダメージがあるジャム瓶は使わない事。ガラスの薄い瓶は使わない事。十分に体を離す事(そのためのチャッカマン)等を気をつけた方が良い。
火が消えているのは燃料を使い切ったから?
この記事の最初の動画を良く見ていただけると分かりますが、瓶内にはアルコールが残っているにも関わらず、火が消えています。この事から、燃料を使い切る前に火が消える原因は十分な酸素を取り込めていない事にあると思われます。
一度火が消えた場合でも、ジャム瓶のフタを開けて瓶内を換気してやると、再度燃焼するようになります。
燃料って気化すれば何でも良いんじゃ無い?
ここを勘違いしていました。恐らくアルコールを使わなければ上手くいきません。理由は燃料の爆発限界にあると考えられます。
アルコールの爆発限界は3.3〜19vol%(空気中)です。(参考記事)一方で今回比較に使用したベンヂンの爆発限界は恐らくベンゼンと同じで1.2〜8.0vol%と想定される。
今回ベンヂンが燃料として上手く使えなかったのは、大量のベンヂンが気化してしまい、爆発限界の8%を超えるまで瓶内で気化してしまった事が原因と考えられる。
爆発限界より大量の燃料が気化した場合、爆発では無く燃焼が始まってしまう。ベンヂンが、一度爆発した後はフタの穴付近で燃え続けていたのはこのためであると考えられる。
終わりに
今週のジャム瓶ジェットエンジンの実験は以上で終了です。来週また改めて実験してみたいと思います。
*1:薬剤コーナーの扱いの小さいドラッグストアでは売っていませんでした。私の住んでいる所のドラッグストア クリエイトには置いてありましたので、見つからない方はまずお近くのクリエイトを見てみると良いと思います