水を冷媒としたエアコン開発

【参考】 自然冷媒 「水」 のエアコンを創る
 面白そうな話があったので紹介してみる。エアコンの基本的な動作原理はこのサイトによればこうだ。

  • 圧縮機で低温低圧の気体状態のフロンガスを圧縮し高温高圧の「ガス」にします。
  • 高温高圧のガスは凝縮器に送られ放熱して、高温高圧の「液」になります。
  • 高温高圧の「液」は膨張弁によって低温低圧の「液」になります。
  • 低温低圧の「液」は蒸発器に送られ、室内の熱を吸収して蒸発し、低温低圧の「ガス」になります。
  • 再び、低温低圧の「ガス」は圧縮機に送られます。

 つまりポイントは室温で冷媒が蒸発しなければならないという事だ。だから冷媒には二酸化炭素やアルコール、フロンガス等の常温で気体、もしくは常温で蒸発する液体が使われる事が多い。でも水は常温では液体だし、気化させるためには100℃まで加熱する必要があるはずだ。

 参考サイトでは『真空』という言葉が出てくる事から、恐らく低圧環境に水を放り込んで沸点を下げようとしているのだろう。そこで、減圧蒸留の友を使って少し計算してみた。

 室温を25℃と想定して、この温度で水が蒸発する場合の圧力を計算すると40mmHgと計算される。1気圧が760mmHgである事から、およそ0.05気圧程度である。参考サイトの水エアコンは水の気化熱で周囲を冷やすようなので、熱交換器の部分にも0.05気圧の圧力が加わる。1気圧=0.1013MPaより、0.05気圧の環境下で加わる圧力はおよそ0.096MPa、つまり1平方mm当たりに10g程度の力が加わると考えると近いと思われる。(1円玉の直径はおよそ20mmのため、1円玉の面積には3kgの荷重が掛かる…あれ?計算を間違えたかな?参考サイトの記述とは大分違うぞ?)*1

 「なんだ。大した事無いじゃないか」と思われるかも知れないが、エアコンのカバーを開けたら出てくる熱交換器は非常に軟らかい。エアコンを壊すつもりは無いので実験しないが、ひょっとすると10gの大気圧でも熱交換器が壊される可能性はある。
 「じゃあ、もう少し頑丈にしてしまえ」という事になるのだが、熱交換器の材料の板厚を厚くすると、今度は熱交換の効率が落ちると思われる。

 ちなみに、冷却の考え方がまったく違うが水を冷媒とした冷却器はたしかにある。このサイトで紹介されている冷却器は、冷たい水を流して部屋の温度を下げようという思想のため、参考サイトの考え方とはまったく違うが…。


 ちょっと考えると課題は山積みのようだが、ホントに水を冷媒とするエアコンが出来たら面白いと思う。ゆーさん。頑張って下さい!

*1:検算:大気圧の20分の1になるという事は、交換器内部の圧力は0.1013/20=0.005065。つまり0.1013-0.005065の力が外から交換機にかかると考えられる。つまり約0.096[MPa]だ。1[MPa]=1[N/mm^2]より、1平方mm当たり0.096[N]の荷重が加わる。1[N]=9.8[kg]より、0.096/9.8 = 0.0098[kg] = 9.8[g] ≒ 10[g]。やっぱり1平方mm当たり10gの荷重が加わると思うんですが…。